わが競馬界はどうか？　残念ながら同様と言わざるを得ない。ちょっとした提言や批判に目くじらをたてたり、
取材を拒否したりする残念な人間が多いことが一番の原因だろうが、リベラルな観点からの批評や深い知識経
験に基づく突っ込んだ記事が非常に少ない。

　良いものは良い、悪いものは悪い。信念を持った遠慮のない報道を時代は要求している。断然の本命馬が敗れ
たとき、その敗因が調教ミスや騎乗ミスだと確信できたなら堂々と批判すればよい。

　ファンは命の次に大事なお金をかけているのだし、関係者はプロなのだから。敗れた関係者は非常につらいが、
それを受け入れて次なるレースへの糧とする。それが当然の姿ではなかろうか？

　ただ競馬は特殊なスポーツである。そのような記事を書くためには、記者自身の深い専門的知識を必要とする。
競馬マスコミに関わる方々のさらなる努力を期待している。日本競馬自体のレベルは、間違いなく世界トップレベル
に近づいている。マスコミと関係者、ファンの関係がそのレベルに達したときこそ、日本の競馬文化の熟成期といえる
だろう。　（ＪＲＡ調教師）